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2011.05.11

これと同じ茶碗ありますか?

 1ヶ月ほど前にご年配のご婦人が「これと同じお茶碗ありますか?」とご来店されました。

岩華さんの磁器のすっきりしたお茶碗ですが、ふたつに割れてしまっています。お嬢様から夫婦(めおと)茶碗をプレゼントしてもらったのに、自分の分だけが割れてしまったそうです。残念ながら、うちでも取扱いしていないお茶碗でした。

お嬢様が買われたその店を訪ね、「もう今は同じもの作ってない、形が変わっている」ということで、似たお茶碗を買われたけれども、あきらめきれない様子がうかがえました。
 その話をお聞きして、あきらめないのが私達 陶点睛 かわさき の良い所!割れたお茶碗をお預かりして、岩華さんとは仲良くさせていただいていますから見ていただきました。
 「この形はもう作ってない。でもそんなに大事にしてもらっているなら、1客でも作ってもよい」と快諾してくださいました。
 待つこと1ヶ月、とうとう特別注文のお茶碗が1客出来上がりました。そっくり同じお茶碗です。
ご婦人の嬉しそうな表情、何度もお礼を言われ帰えられたその後ろ姿に、本当に良かったな、良い仕事させてもらってありがとうございましたと深々と頭をさげました。陶器屋していて良かったと思う瞬間でした。

清水焼の全ての器がこのように作り直せる訳ではありません。作者の職人さんがもう辞めておられたり、手間とコストの採算がとれず引き受けていただけなかったり、窯元さん自体が廃業されていて頼みに行く場所もないなんて事もあります。

希望の品を別の窯元に作っていただく場合もあります。柄や大きさ形状な似せて作っても、作者の印は新しく作った窯のものになります。手造りをするので、少量生産可能です。さらに、京都には様々な技法を持つ窯元さんが大勢おられますので、希望の品の製作可能な技術を持っている窯元さんを探す事ができます。それぞれの窯元さんの技術力も高いので似せて作る事も可能なのです。

このような特別注文はそれなりの費用がかかります。元々のお買い求め金額よりかなり高くなる事もあります。その点を了解していただいてからの進行となります。

大事に使ってくださっていたお客様の気持ちを大切にして、作者に伝えるのも私たちの仕事です。職人さんの手間をキチンとお客様にお伝えして、適正な報酬を保証するのも大事な仕事です。

かかる費用とお客様の満足度を天秤にかけてもらい、お客様、職人さん、私たちの全員が笑顔になれるような仕事につながればよいなと思っています。