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2022.01.24

京都市輝く地域企業表彰 事業報告

 

陶点睛かわさきの店主、河崎です。五条坂の陶器屋です。今回の受賞、大変ありがたく、身の引き締まる思いが致します。

受賞に至った活動ですが、小さな店を夫婦2人でやっているので、お金も人手もなく、何も大きな事はできてません。ただ生まれ育った東山を大切にしたい、よりよくしたいとの気持ちは強く持っています。この気持ちを実現すべく、地域の方々と行政も含め、共に行ってきた、小さな事の積み重ねを評価してもらえたと感じております。

お店は200年続いてまして私で8代目です。建物はひいおじいさんの建てた築120年の京町家です。五条通に面しています。

このあたりは江戸の昔からヤキモノの街でして、うちみたいな小売りの陶器屋、卸売の店、窯元さん、陶芸作家さんなど、清水焼に関わる方が沢山おられる、清水焼のメッカともいえる場所です。

うなぎの寝床で細長い敷地でして、真ん中に坪庭があって季節を楽しめます。

1階は販売スペース、2階にはちいさなギャラリー茶室があります。

この湯呑、山口県の豪商の蔵の中にあった幕末勤皇志士 久坂玄瑞が愛用していたもので、実は私のひいひいじいちゃんが造りました。写真真ん中が本物、両端は、伝統工芸士藤田さんに作ってもらったレプリカです。

このように代々がお仕事をさせて頂けたのも、数多くのお客さんに支持されてきたからです。本当にありがたい事です。今後も皆さんに喜ばれる、愛されるお店であるよう、なお一層努めたいと思います。

焼物のイベントというと、8月の陶器祭100年続いてまして、コロナでここ2年はできてませんが、ご存じの方も多いと思います。全国からのお店が集まり400軒くらい出ます。色々なヤキモノが安く買えるので、例年多くのお客さんで賑わってきました。

このような安売りではなく、地域の宝である、清水焼をもっとアピールする機会はないかと考えて、それが碗わんONEというイベントにつながりました。

10年前から清水焼の文化及び歴史的な魅力の発信を主眼に毎年 11月に開催してます。主催は五条坂茶わん坂ネットワークです。うちみたいな陶磁器販売店をはじめ 、卸問屋、窯元・作家、学校、組合団体計50名ほどのグループです。

それぞれが、独自、あるいは共催で企画展示講演会を開催してきました。これまで多くの”焼物好き”ファンが、この界隈を散策しイベントを楽しむ姿が見られました。

左が陶磁器会館で開催した次代を担う学生の作品コンテストの様子です。参加校も少しずつ増えて前回は8つの芸術系大学から出品がありました。門川市長さんや、京都府知事さんも会場にお越しいただき、市長賞と知事賞を直接選んで頂いたり、見学者の投票で決まる大賞を設け、作品つくりを学ぶ学生の意欲を大いに刺激しました。

右は昨年うちの2階で開催したぐい呑展です。色も形も技法も違う、いろいろです。みんな違ってみんな良い、清水焼の幅広さがよくわかる展示になりました。

これも碗わんONEでやったイベントで、国立博物館の茶室で、京女茶道部の協力でおこなった、抹茶碗を体験している様子です。地域の陶芸家が開睛館小中学校に寄贈した抹茶碗を順に手に取り、好きなのを選んでもらい、抹茶を呑んでいただくというちょっと変わった茶会です。手造りの良さや抹茶碗の個性を、手に取り、抹茶を飲んで、感じていただけました。

うちの2階ギャラリーでも毎年違う企画展示をしていますが、その中の4つの内容です。

左の上が明治の帝室技芸員だった清風与平展、下が江戸から明治の清水焼の作品展です。並べた作品は大学の研究室や個人からお借りしたのですが1個で評価額百万のモノもあり、びびりました。無事にお返しできてほっとしました。

2つは、どちらも立命館大学考古学研究室と共催した企画です。「明治期の磁器人形展」では、うちの押し入れから出てきた400ぐらいの磁器のちっちゃな人形を、調査研究してもらった成果を展示しました。「五条坂に残る登り窯展」では2016年当時6基まだ地域に残っていた登り窯について、その構造、特徴を解説しました。吹き出す炎と煙、50年前まではこんな風に焼かれてたとお伝えできました。

これからも様々な切り口で、清水焼の歴史や文化などその魅力を、少しずつでも伝えて行きたいです。

昨年で10回目でしたが、実は構想から開催までに10かかりました。販売業では業態ごとに団体の壁があり、お取引があれば利害関係やわだかまりがあります。また 作家さん達には派閥もあります。 それらを、メンバーで何度も話し合い、乗り越えて来ました。そんな碗わんONEですから、これからも長く続けて行きたい事業です。

少し前ですが、電線地中化に伴い五条通の歩道に地上器が設置されることになりました。この上に陶芸家の陶板作品を貼り付けて、ここが清水焼の街ですよと発信しようと陶器屋の組合が主体となり、私は実行委員長として動きだしました。当初、国土交通省との話し合いで、道路占有費用年間数十万円と言われて計画は、いったん頓挫したのですが、陶板と一緒に地図や道案内標識などを貼り公共性を持たせるなどの調整を続け、2009年に素晴らしい散歩道が完成しました。陶芸家さんは無償で陶板を作ってくれました。大きな陶板を作るのは大変だったと思います。東山区役所、清水寺、京阪電車、京都女子大学、京都府、関西電力さんら多くの方々から大きな力添えを頂きました。                                                                                                                             完成後、四条通でも同様に作品を貼り付けたり、電線地中化を進めている地方自治体が視察に来られたりと、なんとか完成させたことが次につながり、歩道を行きかう人々にも楽しんで貰えて嬉しいです。また近くを通られましたら是非見て下さい。

「東山・観光・交通・環境・協力会議」 略して3Kと 「東山観光おもてなし隊」といった行政との連携活動についいてお話します。

訪れる方に安心・安全・おもてなしを感じて頂き、地域の魅力向上を目指す3K会議に参加しています。お店のトイレを「観光トイレ」として登録して、どなたにも利用して頂いています。

東山区役所主催のおもてなし講習会に参加して勉強してきました。車椅子で清水寺まで観光してみる体験では、狭い歩道を登るのも一苦労。聴覚障害者から手話を習ったり、視覚障害者への商品の案内の仕方を学んだり、外国人のお客さんとのコミュニケーションについて話し合ったり。そんな取組みから「散策マップ」「多言語指差し案内」ができました。

東山は文化財の宝庫で素晴らしい観光地ですが、駐車場・駐輪場や公衆トイレが不足し、公設の観光案内所が無いなどインフラの不足はまだまだあります。でも、迎え入れる人々の気持ちで補えるのではないでしょうか?

観光客には、車椅子の方や、赤ちゃん連れ、外国人、色々おられますが、皆さんに東山を楽しんでもらいたい、そのために、私達にできる小さなサービスを寄せ集めて、その情報を共有しているのが「おもてなし隊」です。東山区役所のお力で現在約50店舗ほどが参加しています。うちの店は、「洋式トイレを使えます」「赤ちゃんのミルク用のお湯提供」などを登録しています。例えば、うちでは無理ですが、あのお店なら車椅子でお手洗いが使えますよと案内できる仕組みです。

旅先で受けた、ちょっとした親切で、その町がとても良い思い出、記憶に残ります。

逆に、この地域を訪れた方に、東山が京都が良い思い出として残るように、私ができる最大のおもてなしを続けていきたいと強く思っています。

 以上、活動内容を細々とお話しましたが、このどれもが私独りの成果ではありません。共に活動下さった方々のお陰ですから、代表して陶点睛かわさきが受賞させて頂いたと思っております。

この受賞を励みに、これからも 東山を 京都を 大切にして、よりよくする活動に微力ながら取り組んで参ります。